LOADING

コンテンツ CONTENTS

長柄・短柄の色々な彫刻刀
専門家用の彫刻刀には、長い柄のほかに、短い柄の彫刻刀があります。

木版画制作に慣れてくると刀の切れ味が気になり、彫刻刀はやはり専門家用が欲しくなる

Q、どうしても専門家用の彫刻刀じゃないとダメなの?

彫刻刀の「命」は、結局は刀の鋼(はがね)の質にある

鍛冶屋の作業風景。真っ赤に焼いた鋼を叩いている
こんにちは、萬里(まさと)です。

木版画を始める初心者がスタート時に用意する彫刻刀として、
前項では「パワーグリップ」という廉価なセットをおすすめしました。
しかし、このオススメは、両手を挙げてオススメというものではありません。

あくまでも、スタート時の負担を軽減するためのオススメなのです。

彫刻刀は、可能ならば最初から専門家用がいいです。
包丁であれナイフであれ、刃物というものは、切れ味の良いのが一番。
それが最も効率がよく、作業がきれいにできる上にスピードも速く安全も担保されます。


だから、経済的にゆとりのある人、あるいはじっくり学ぶ構えの人は、
初めから専門家用の彫刻刀で準備されることが本当の意味でおすすめなのです。

ただし、それはあくまでも理想型。

良いものからは「眼から鱗」の体験が起こる

目から鱗が落ちる
しかし、たとえスタート時はオススメ品でガマンするとしても、
小遣いを貯めて少しずつ専門家用にチェンジしていこうという計画を持っておくことは大切です。

初めから無理して専門家用をそろえる必要はないものの、将来的には計画的にそろえる必要はあります。


なぜなら、やはり良い道具というものにはそれだけの理由があるのです。
それは使えばわかることで、使うことによって「眼から鱗」の経験をして実感できることです。

しかも、彫刻刀というのは前項でも述べたように、「一生もの」の道具なのですから・・・。


彫刻刀選びで迷う長柄と短柄、どっちがベター?

長柄と短柄の専門家用彫刻刀
専門家用の彫刻刀選びというと必ず迷うのが、長柄と短柄の問題。
鶏と卵、どちらが先か? の問題のように、決着がつかずに悩みます。

結論は、結局どっちでも良いのです。



大事なのは「あなた」という個にフイットするもの

あなたの手にフィットする
こんな答えだと「詐欺だ」と言われそうですが、刀に差がなければ、あとは好みといって良いでしょう。
要するに自分の手に、よりフィットするのはどちらかで考えれば良いのです。

使う人=自分。
だから、自分にとって一番具合が良いのはなんだ、と考えれば良いのです。

手が小さい人は、長柄だと柄が長すぎて使いづらいと考える人もいるでしょう。
逆に大きい手の人だと、長めに保持しようとしたら短柄で柄が足りなくなったという人もいるでしょう。

ひとつ知っておきたいのは、長柄は、持ち主の手に合わせて柄の長さをカットして調整することができるということ。

自分の手のサイズにぴったり合うように長さを調整したり、
指がなじむ場所を削って手が滑りにくくなるように調整したり、
と多くの人が自分の体の特性に合わせて加工・調整しています。

それぞれのメリット・デメリットを考え合わせた上で決めれば良いのです。
ただし、刀の調整するのはあなた自身です。

あなたが、それだけの時間をかけて彫刻刀1本に対処するかどうか、
そこも大事な視点であることを忘れないように。
話だけですぐに「じゃ」と鵜呑みにしないで考えましょう。


彫刻刀の切れ味は、質+メンテナンス(手入れ)

ハイス彫刻刀 印刀
(画像参照:道刃物工業株式会社Webページより https://www.michihamono.co.jp/c/item/gr1/c12/20020000)


彫刻刀は、常にスパスパ切れる状態であって欲しい。
これは誰もが望むことです。

しかし、好きなだけ使うばかりでは彫刻刀の切れ味は悪くなる一方です。
専門家用がいくら良い鋼(はがね)を使っているといっても、使えば切れ味は落ちて行きます。
なんといっても、使うたびに彫刻刀の刃先はダメージを受けざるを得ないのですから。

廉価な彫刻刀であろうと、鋼(はがね)の質が良い高価な専門家用であろうと、
ダメージを受ける条件に変わりはありません。

もっともいけないのが、彫刻刀をサビさせてしまうことです。
鋼(はがね)は基本的には鉄ですから水や湿気に弱く、放置するとサビてきます。
いったん表面がサビると、サビは時間と共に刀の内部に浸透して行きます。

こうなるともういけません。
いくら研いでもサビの修復はできませんから、刀は次第にボロボロになって行きます。

刃先にサビが生じたら、少々研いでも刃先のギザギザは無くなりません。
版木を彫ろうとしてもギザギザの刃先では、彫り進むことはできません。

そんなわけで、刀をサビさせないことが一番のメンテナンスとなります。
そのためには、彫刻刀を使用するたびに鋼(はがね)の部分を油布でよく拭いてからしまう習慣を持ちます。

使った刀だけを油布で拭けば良いのではありません。
自分の持っている彫刻刀の全てを、一緒に拭いてしまいます。

彫刻刀が一番嫌うもの ➡︎ それは「水」

彫りの後は油布で彫刻刀を拭く
理由は、わかりますよね?
空気中には水蒸気がいっぱいですから、使わない彫刻刀も実は常に水気に触れているのです。
そのために未使用の彫刻刀でも、長い間放置するとサビを生じてきます。

その点を踏まえて、彫りの作業の後では必ず自分の持っているすべての彫刻刀を、
油布で拭き上げてからしまうという習慣をつけましょう。

乾いた布で拭くだけでも良いのですが、やはりちょっと油っ気を含ませた方が効果が高いです。

一般的には「椿油」といわれています。

でも、わざわざそれを買わなくても、まずは未使用のサラダ油なり自転車用の機械油なり、
手近にある植物油でも結構ですから、ボロギレに染み込ませて刀の鋼(はがね)部分を拭いてください。
ただし、動物性の「脂」はNGです。

毎回油布を用意するのは、きっと面倒になります。

ハンケチ1/4程度の綿布に油を染み込ませ、ポリ袋に入れて空気を抜いて口を縛り、彫刻刀と一緒にしまっておきます。
刀を使ったら油布で全彫刻刀を拭き上げて、一緒にしまう。

これをルーチンワークにしましょう。

油っ気が抜けてきたら、また油を染み込ませておけばいいのです。
欲張ってベタベタに油をつけるのは、ホコリを呼ぶだけで逆効果。
うっすらと油の膜ができれば良いのです。


本当の彫刻刀のメンテナンスは、「研ぎ」です。
これは重要事項ですので、また別の項で話します。


外部リンク

長柄・短柄の各種彫刻刀
彫刻刀を使う作業といえば、木版画だけでなくいろいろありますね。
道具の手入れは誰もが気を配るところです。

「木彫りのぬいぐるみ」というブログを書いている木彫家の大二郎さんも
油布で彫刻刀の手入れをしていらっしゃるようです。

「彫刻刀の管理方法は大丈夫ですか?」

って記事を見つけました。
大二郎さん、ちょっと覗かせていただきます!
木彫も面白そう!