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版を彫って形を表す2つの方法 陰刻表現と陽刻表現

一日あるいは半日の木版画体験というのは、時間的には少々厳しいところがあります。
デザインして、彫って、そして摺って、とつながっていく作業なので、
やたらと彫りに時間がかかっても困るのです。

そこで、初期の頃によく制作してもらったものがこのパターン。
シンプルな図柄を中央線を境にして逆転写し、
「陰刻」と「陽刻」で彫り分けます。


「陰刻?」「陽刻?」という方は凹凸(普通は凸凹といいますね)。
中国風の陰陽五行説の考え方から来ているもので、
出っ張ったものを凸、凹んだものを凹と対立させる考え方。

版木は、もともと何もしないで絵の具をつけて摺ると、
全面黒(カラー)となります。

だから何か形を表現しようと思ったら、その形を彫る。
つまりその形を凹ます。つまり陰刻です。
そうすると、彫ったところは紙の色がでて、白く表現されます。
陰刻表現=形を彫って白で表す。

でも、中には「紙に墨で描くように」形を黒で表したい、という人もいるでしょう、
その時には形の線をそのまま残しておいて、その線の周りを彫る(「さらう」といいます)。
つまりその形を凸で残し、それ以外を浚い(さらい)とってしまいます。

単色、いわゆるモノクロ木版画は、この陰刻と陽刻の組み合わせ。
他に特別な基本の技法というものもいらないのです。

その基本形を学びながら、短時間で作品をつくる。
その手軽な方法が上のような練習作品です。

上図の右下は「陰刻法」。
左上の部分が「陽刻法」。これの背景部分を彫りとってしまえば、
図柄はより陰と陽の対比になりますが、この作品は模様彫りしてあります。


逆転写だけど、一つの図柄のような作品

記事タイトル下の皿に乗ったりんごの作品は、
陰刻表現と陽刻表現を巧みに組み合わせて、一つの図柄を作り出しています。
これが単色モノクロ版の基本の表現法です。

上図の作品は、ワンデイでの作品ですが、
彫り方の特徴もあって左右逆転写にもかかわらず、
なんだか一つの図柄のようにも見えますね。
彫りのちょっとした違いで、表現はずいぶん変わってくるものです。

そうした事も含めて、このパターンの練習作品では、
図柄の作り方、彫り方の基本、摺りの初歩を学びます。


作品は自分表現だから、変化させる意気込みは◎

人それぞれに感性は異なります。
中には作業しているうちに、ここはこおいう風にしたいなあ、
とイメージが膨らんでくる人もいます。

いいんです。
自分の作品なのだから、アイデアが浮かんだらやってみる。
そういう自在な発想をするのは、基本の訓練というだけではできません。
だから、着想が浮かんだら常にやってみる、というのも大事な学びです。

上図の鳥作品。
逆転写の練習作品ではありますが、ちょっとだけ雰囲気が違いますね。
完全に陰陽の対比になっていません。
黒いボディが互いに反り返っているのが、
単に陰陽対比にさせるより愛嬌のある雰囲気がでて愛らしいですね。


好きなものがあったら「自分の好き!」でチャレンジして!

「わたし、ひょうたんが好きなので、ひょうたん描いてもいいですか?」
と単刀直入に宣言し、さっさとデザインを描き始めたt/iさん。
彫りに時間がかかりすぎるのは困るけどとの返答に、
「簡単に線だけにします」、と作業に入っていきました。

描画でも他の絵画でも同じですが、
一番時間がかかるのは、デザインです。

モチーフをどうしようか、構想をどうしようか。
結局、ほとんどの時間をモチーフを考えることに使って、
作業時間はなくなってしまいます。

だから、この場合のように「自分の好き」なモチーフを持っている人は、
どんどん制作を行っていけばいいと思います。

このひょうたんの練習作品。
彫りに微妙な工夫が施してあるのがわかるでしょうか?
意図的に、微妙に線幅の彫りを工夫してあります。


こちらの体験教室では、参加する人の資質にあわせて、
少しずつ作業方法を変化させていただいています。
なるべく与えられた時間内に、参加する人の希望を取り込めるよう
工夫しながら制作を進行させていくように心がけています。

さまざまな表現手法を持った木版画の世界を、ちょっと覗いてみませんか?


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