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彫刻刀の【命】は刃先です

こんにちは、萬里です。

彫刻刀は刃物。
だから、怪我をしないことがもっとも重要なことだ、と前回書きました。
では、実際彫りを行うときに気をつけるべきことはどんなことでしょうか?

やはり刃物なのですから、基本的には刃先を鋭く尖らせることです。
つまり、切れ味の良い状態の刃先であるように、メンテナンスすることが重要なのです。

刃物による怪我の原因は、たいてい刃が切れないことによって生じます。
刃が切れないから、無理な力を入れる。
それで刀が滑った勢いで怪我をする。

だから、鋭く尖った刃先の方が危ないように見えて、実は安全なのです。
彫刻刀の【命】は、刃先にあるのです。

メンテナンスの「研ぎ」も技術が必要です。
一度に覚えられないのですが、少しずつ研ぎの練習をしていくことも、
木版画制作の上達のコツです。

作業をしたら、終了前に刀の手入れをする。
それがプロ・アマ問わず一番いいことなのです。


版木に挟まった状態の彫刻刀を上下に揺らさない

メンテナンスが必要な刃先を一番痛めてしまうのは、版木の固さではありません。
実は、刀の使い方のまずさなのです。

初心者は、作業中に多くのことを考えられないため、
彫れないとなると、グラグラと前後に彫刻刀を揺すたり、
ねじり込むように、力任せにゴリ押ししようとします。
こうなるとアウトです。前後左右に揺られてはたまりません。

途中まで版木に潜っている彫刻刀を、前後に揺すると、
彫刻刀の刃先は「てこの原理」でいとも簡単に折れてしまいます。

ギザギザの刃先になったら、当然刀は彫れなくなります。

そんな彫り方をしないように注意するのが、まず一番大事。

彫りは指先の仕事のように思われがちです。
指先だけを使う場合もありますが、基本的に体全体を使う必要があります。
ちょっと実験をしてみて下さい。

彫らなくていいですから、彫刻刀を構えて版木の表面を彫ったつもりで
5cmほど前方へ進めてみて下さい。
そうすると、指が伸びて5cm動く間に、手の甲も手首も下に下がってしまいませんか?

このときよく観察すると、彫刻刀の柄も一緒に下がっているはずです。
刃が版木の中にくいこんでいる状態のときに、こうした指押しの彫り方をすると、
刃が固定したままで、柄の方は上下運動していることがわかります。

こうなると、版木に挟まれている刃先は上下できない状態ですから、
軽い上下の動きでも「てこの原理」で強い力が刃先に働いて、折れてしまいます。

これを防ぐには、指先で彫らないで、彫刻刀を持ったままの姿勢で、
体を前に押し出します。重心が前に移動します。

こうすると、刀の上下運動はなくなり、彫りやすくなります。



「てこの原理」が働くのできちんと意識しましょう

「彫る」動きの中でしゃくりあげる。ストップモーションお・こ・と・わ・り

外部リンク

彫刻刀の「危険な使い方」について調べてみました。
しかし、流石に大人用のまとまったサイトは目に付きません。
一般的には、当然のこととして使い方の説明の中に紛れ込んでしまい、
「危ない使い方」といったまとめ情報の出し方はしないのでしょうね。

それに対し、学童対象か学童への指導用のサイトの方は、
「危ない・安全」を集中的にまとめて解説してくれるサイトが散見されます。

もちろん、子ども用だから大人には不足というわけではありません。
使用法に関しての理屈は同じですからね。

そんな中、株式会社サンワさんのYouTubeは、ホッとするようなシンプル短時間の動画なのに,
ポイントがスカッと伝わってくる秀逸な動画でした。

もうひとつないかしらん、と思って探してみたら、
元図工の先生が展開している教育用のサイトの動画も
たいへんわかりやすいものでした。

学童向きあるいはその指導者向けの内容ですが、基本的に道具の使い方はいっしょ。
かえって大人でも素直に視聴できて役に立つかもしれません。

株式会社サンワさん、図工人さん、良いサイトを参照させていただきました、ありがとうございました。
株式会サンワ

ついでにこちらの動画も覗いておくといいですよ.
たのでん
       
元図工の先生の動画も丁寧です。大人には余分な情報も入っていますが、
初心にに返って視聴してみてはいかがでしょうか。
図工人